「103万円」だけではわからない?あなたの『扶養の壁』はどこにある?
最近「103万円の壁」という言葉とともに、様々な「壁」の話を耳にする機会が増えてきました。
「103万円の壁」の他にも、「106万円の壁」、「130万円の壁」、「150万円の壁」、「201万円の壁」と、次々と壁が出てきて、働く時間や収入の上限について、色々と考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
働き方は時代とともに多様化しており、給与収入以外に、フリーランスや副業をする方も増えてきて、配偶者、子供、親、もしくは自分自身が扶養になるのかどうかの判断が難しくなってきています。
そこで今回は「103万円の壁」をもとに、「所得税の扶養」の判断となる「扶養の壁」についてお話をしていきたいと思います。
▼所得税の扶養はなにで判断する?
まず、所得税の扶養とは何をもって判断をするのかご存じでしょうか。
国税庁ホームページには、控除対象親族の対象条件について、下記のように書かれています。
扶養親族とは、その年の12月31日(納税者が年の中途で死亡しまたは出国する場合は、その死亡または出国の時)の現況で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人です。 (注)出国とは、納税管理人の届出をしないで国内に住所および居所を有しないこととなることをいいます。 (1)配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。 (2)納税者と生計を一にしていること。 (3)年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること。 (給与のみの場合は給与収入が103万円以下) (4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
ここでは、上記の「(3)、年間合計所得金額が48万円以下であること「(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)」について掘り下げて説明したいと思います。
▼控除対象親族の対象条件の「合計所得金額」とは?
みなさんは「合計所得金額が48万円以下」の「合計所得金額」とは何の金額かご存じでしょうか。扶養の判断をするには、この「合計所得金額」がポイントとなりますので、一緒にこのポイントを紐解いてみましょう。
合計所得金額について、国税庁のホームページに詳しく書かれています。
言葉では、解りづらいため、図で見てみましょう。図中の赤い枠内が合計所得金額です。
財務省(所得税計算の仕組み(イメージ))を加工してFP Office株式会社にて作成
合計所得金額を見る前に、所得の種類の多さにびっくりされる方もいるかもしれません。所得の種類は全部で10種類もあり、所得を出すための計算方法も様々です。
合計所得金額を確認するには、所得の種類を把握する必要があります。まずは下記の所得の種類から何所得になるのか確認していきます。
国税庁HP(所得の種類と課税方法)の図表を参考にFP Office株式会社にて作成
フリーランスの方、副業をしている方、年金を受け取りながら仕事をされている方のほか、保険の満期保険金や個人年金を受け取った方、株の配当を受け取った方など、給与以外に収入があった方はしっかり確認する事が大切です。
所得の種類の確認が出来たら、今度はその所得金額を出すための計算をしていきます。
上記図の緑色の枠で囲っているものがそれぞれの計算方法になります。
ではここで、「103万円の壁」と言われる、給与収入103万円の場合の給与所得金額を計算してみましょう。
計算式は次の通りです。
給与収入 ― 給与所得控除 = 給与所得
給与所得控除は下記の数字を当てはめて計算します。
国税庁HP(No.1410 給与所得控除)を参考にFP Office株式会社にて作成
上記の数字を計算式に当てはめると、
1,030,000円 ― 550,000円 = 480,000円
給与所得のみの場合は、給与所得=合計所得金額 となり、給与収入が103万円の方の合計所得金額は48万円となります。
これが控除対象親族の対象条件の1つである、「(3)年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること。」であり、「103万円の壁」という事です。
ちなみに、この48万円は、所得控除の基礎控除の金額で、合計所得金額が基礎控除を超えた場合は扶養に入れないという事になり、ここに「扶養の壁」が出てくるのです。
ただし、時々ですが、所得税がゼロ(課税総所得金額がゼロ)の場合は必ず扶養になるというように、誤った認識を持たれている方がいらっしゃいます。上の図でいうと、青色の枠のところです。
所得税は、課税総所得金額に税率をかけて算出されるため、課税総所得金額がゼロで扶養になる方もいらっしゃいますが、全員が扶養になれる訳ではありません。
▼扶養に入ることが出来ないAさんと入ることが出来るBさん
次のAさん、Bさん、2つのパターンで比較してみましょう。
【Aさん】
合計所得金額 100万円
所得控除額 100万円
(内訳 社会保険料控除40万円、生命保険料控除12万円、基礎控除48万円)
合計所得金額 100万円 - 所得控除額 100万円 =課税総所得金額 0円
【Bさん】
合計所得金額 48万円
所得控除額 48万円 (内訳 基礎控除48万円)
合計所得金額 48万円 - 所得控除額 48万円 =課税総所得金額 0円
Aさん、Bさんとも課税総所得金額が0円なので、所得税は発生しません。
しかし、合計所得金額が48万円を超えているため、Aさんは扶養に入る事はできません。
以上のように、扶養に入れるかどうかを判断するためには、
収入が どの所得になるのか調べる (2種類以上の収入が有れば其々調べる)
①でわかった所得の計算方法を調べて計算する
②でだした金額を全て合計する
③が48万円以下か確認する
という流れになります。
おわりに
給与収入だけであれば、「扶養の壁」=「103万円の壁」という考え方も出来ますが、それ以外の所得の場合は、計算をしなければ「扶養の壁」を超えたのか判断することは難しいと言えます。
中には、年齢によって控除額が変わったり、計算が複雑だったり、さらに配偶者の場合は、一定の金額までは配偶者特別控除を受ける事が出来たりと、判断が難しいものもありますので、わからない場合は専門家に相談されるのも選択肢の1つだと思います。
働き方が多様化する中、今までに経験のない所得の計算が必要になる方もいらっしゃるかもしれません。「扶養の壁」をしっかりと理解して、多様化の波を乗り切っていきましょう。
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