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執筆者の写真中井 康寛

FPと読む新聞シリーズ 戦略の薬は「ポジショニング」


今年は小さい秋があまりにも小さすぎて見つからないまま寒くなりましたね。

寒暖差に体調はついていけていますでしょうか?



今回は11/13の朝刊見出し

からテーマを拝借しました。



内容としては、ネット上のやりとりを経ればコンビニでも市販薬が買えるのですが、そのコンビニに薬剤師のような専門の方を置くことを求めない、ということだそうです。確かに薬局併設のコンビニは見かけるようになりましたね。


個人的には風邪をひくと

汗をかき ➡ 水分を取り ➡ よく眠る、の継投策でリカバリーしますが、それでも辛いときは薬に頼ることもあります。


「利用前にネットでの面談が必要なのか・・・」

正直に言えば、それもちょっと面倒だな、自分は利用するだろうか・・・と頭に浮かびました。それでも、「核家族化」「高齢化」という現代の日本の視点に立つと確かな需要がそこにはあるのかもしれません。


一人暮らしの高齢者にとっては、身近にあり、いつでも利用できることはとても心強いもの。健康にかかわることであればなおさらです。


「もしもこういった症状が起きれば、このアプリを起動して、このサービス利用すれば、ここでこういった薬がもらえる。」

そんなルートが認識できているという安心感そのものもまた、精神上の薬となるのかもしれません。

今はまだ風邪薬や胃腸薬などが対応の範囲だそうですが、守備範囲が広がれば、それはもう立派な社会インフラですね。



そんなことならすぐにでも、となりそうなものですが、

すぐにタッチできないことにはもちろん意味があります。例えば、若年者のオーバードーズなどの問題。気軽さが売りのコンビニですが、その延長で薬に手が届くようでは困ります。そうなると、タバコやお酒を買うかのように、身分証を見せたり、マイナンバー管理などでもされるのでしょうか。やはり面倒な部分は必要そうです。

利便性が上がるというよりは、その重要視される重心が動いていく、ということなのかもしれません。



ともあれ今回もそうですが、コンビニの新しい発想は私たちの生活に入り込み、不便の隙間をうまく埋めてくれます。ATMでお金を引き出し、代行収納をしてから、淹れたての珈琲を持って出てくる。バラバラで取り組んでいると余計な時間が必要になります。生み出された時間によって、買った珈琲も美味しく味わえるというものです。


サービスの進化は光陰矢の如し。お金に関わることにも期待したいところです。いずれバイクに乗った薬剤師さんが家まで医薬品を運んでくれて、ついでに遺言書を渡せば、コンビニまで運んでくれて預かってくれるかもしれません。



ところで、ビジネスの側面から見ると、今回はあくまで場所貸しという位置づけと記事では書かれていました。収入は薬局からの手数料だそうです。

コンビニでも薬剤師などを置けば市販で売られている薬の販売は可能です。でも実際は人が集まらないので普及はしていません。こちらも記事によれば、全国のコンビニのうち医薬品を売る店舗は23年2月時点で0.7%にとどまるとのこと。


人が集まらない理由もいろいろあるようですが、ドラッグストアで働く薬剤師の方でさえレジ打ちや品出しで大変そうなのに、コンビニとなるとさらに業務が増えるの??とも思います。


個人的には気になることも。


今やコンビニの店員さんで日本人の方が珍しいくらいになりました。新しい業務を習得する負担は倍数ではなく乗数でのしかかるのではないでしょうか。

当然、トラブルも増えるかもしれない。

深夜のコンビニとなると、フォローも手薄になりがち。

「せっかく頭が痛くても頑張って来たのに・・・・薬が手に入らない」なんてことも・・・。


と、やはり考えてしまうと色々あります。

でも、そこまでしてコンビニが医薬品にアプローチしたい理由はどこにあるのでしょうか。おそらく一つには、その利益率があるのではないでしょうか。


それをフルに生かしているものこそドラッグストアです。

この勢いには目を見張るものがあります。

23年のドラッグストアの売上高は、約8.3兆円で前年比8.2%増と大きく伸びました。


強みは商品のポジショニングにあります。

毎日触れる食品などは安値で消費者にアプローチし、医薬品で高い利益確保を狙う。

実に売り上げの3割が食品を占めるに至っているとのことですが、インフレの昨今では、この効果は抜群です。コンビニのようなオーナー制をしかないドラッグストアでは、そのような戦略をスムーズに上意下達できるため、運営体制も強みと言えます。



FPとしてクライアントの方とお話をしていると、その影響力の一端が垣間見えます。

ライフプランを作成する中で生活費はとても重要な項目なのですが、中には、「(生活費が)ちょっと高いかも、、」と思われる方もいらっしゃいます。


食費がその多くを占める時に、その要因を検証してみると、この「ドラッグストア」が顔を出すことが割とあります。安さの魅力を追求した結果、トータルとして余分な出費がかさんでいるケースもあるので、そうなっていないかを確認することは必要かもしれません。


コロナウイルスの蔓延が落ち着き、インフレに悩む日本人に加えて、日本の「質」に関心がある訪日外国人の回復も追い風となります。この流れをより確固たるものにしようと、企業も慌ただしく動いています。

今年の2月には最大手のウェルシアと2位のツルハが統合の協議を始めると発表しています。ここでも調剤店の店舗拡大を打ち出しています。


さらに見据える先のマーケットには、高齢化が進むアジア。

特に日本ほど医療体制が発達していない場所では、より一層社会インフラとしての期待が高まるかもしれません。



コンビニ化するドラッグストアがあり、ドラッグストアのようなコンビニができていく。

明確に差別化されていた業態がどんどん混ざり合う。そんな事象があらゆる分野で起こっています。

利便性の追求という標榜の下で、テクノロジーは仕事や役割の境界線を溶かしていく作用を持っています。消費者とすれば当然嬉しいのですが、労働者目線で見ると、その環境の変化についていくのも大変ですね。


独占業務のように聖域がしっかりと担保されていればそんな心配もご無用なのでしょうが、それがいつかは溶けるかもしれない。「日本の労働人口の約半分がAIなどで代替可能」と示したオックスフォード大学の研究結果もよく取り上げられます。


冷静に考えればそれって要らないよね。

ひょっとしてこれはもっと簡単になるのでは?

そんな疑問は格好のビジネスチャンスの余白として浮かび上がります。


世界の大きなうねりに個人は腰が引けてしまいそうですが、

どこかにヒントはないでしょうか。


「医薬と食品。ドラッグストアはポジションを活用することで今の時代に立ち向かっている」

ということでしたが、この考え方を私たちにも当てはめられないでしょうか。


同日の新聞記事に


仕事が変化することに呼応して、昨今は私たちの働き方も流動的です。

ここで先ほどのポジショニングを意識して、「生きていくための本業」と「広げるための副業」

と役割付けしてみる。



バランス感覚が求められますが、そうやって培われたオリジナルな聖域が個人がうねりの中で立つ為に大事になってくるのかもしれませんね。


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